何を食べようかと

久々に東京で昼間時間が空いたので、何を食べようかと昨夜から考えていたが、起きてみるとこれ、というのが思い浮かばない。

日頃芝居三昧で昼の食事をゆっくりとることは珍しく、それだけにあれやこれやと思い悩んで、「はやし」の天ぷらか、はたまた「みかわや」の洋食か、少し足を伸ばして「いせき」のどぜうか、と考えつつ、時季だしやっぱりみかわやのヴィシソワーズか、と本店は工事中の為ニューメルサ七階まで上がって来てふと目に留まる蕎麦屋の看板。「寺方蕎麦 長浦」とある。

大奥のお局みたいな名前だなあ、と思いながら品書きをしげしげ眺めると、これがなかなか食欲をそそる内容。新店で失敗するのは懲り懲りなのだが、ままよ、と入ってみる。結果は大当りであった。

五麺八菜の点心コースを注文す。最初のもりそばで悪くないと確信し、二椀目のすいれん(じゅんさいととろろののったうす味のだしに酸味のきいた冷汁の稲庭風うどん)も乙。茶そば、納豆そばと続くあいさにキウイの白和えやごま豆腐、アボカドの醤油漬けなどの酒肴が出て酒がすすむ。

高野山の秘酒とある純米吟醸「般若湯」が、甘からず、さりとて水っぽくなく、いい酒であった。最後に出た妙興寺そばがこの店の眼目。刺身のつま状の細かい大根がそばと混ぜこんであり(練り込んであるのとは違います、念の為)その上に白黒のごま、海苔(これがもみ海苔でなくきちんと切られた短冊肩なのが野趣を削ぐ、残念)。

珍しきはつけ汁で赤味噌と醤油で作った、まことにに風趣に富んだもの。薬味のねぎ、大根おろしと生姜を入れ、一口手繰ればこはいかに。今まで味わったことのない妙味である。

思わず単品でお代わりを注文。そのつゆを蕎麦湯で割れば、まさに蕎麦味噌汁!不味かろう筈はない。デザートの菜饅頭はふわふわぬくぬくで福々しく、抹茶豆腐は意外なほど苦みがきいて呑兵衛の口にも合う。薄茶まで付いてまことに至れり尽くせりで満足の一席であった。

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