男のきもの暦
九月その二




相変わらずの暑さで純ひとえには衣替え出来ず、引っ張り出したのは絹芭蕉の十字絣。そね名の通り芭蕉布風の文様を絹で織り出した夏紬の一種である。
二十年前に後にお世話になる三條の社長が、私が常磐津の師匠の人間国宝認定のパーティーに出席する為、誂えてくれた物である。大きな十絣と赤みのある地色が二十代後半からは何となく気恥ずかしいような気がして、長いこと箪笥の肥やしであった。
ようやく四十に差し掛かり、少し派手でも着て見ようという気になり、引っ掛けて見ると悪くない。夏物なんだけど、まったく透けず、意外に皺にならない。何より体にフィットする。
それにしても、十年二十年経って又似合うようになる。これが着物の醍醐味であり、エコなる所以である。
帯はちょっと贅沢に羅の 角帯を合わせてみた。
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