東奔西走十泊の旅 その四


二月は問屋が夏物を発表する月で、私はの中でも特に夏物が好きな上に、通年問屋に商品の揃っている冬物と違い、発表の時に押さえなければ、シーズン本番にはロクな品が残っていない。ゆえに、ついつい多目に買ってしまう。
まあしかし、これから先は「夏物が豊富に揃っている」というだけでも差別化が図れ、全国の着物ファンに魅力を感じてもらえる強味になる、と自分を納得させるのである。

絽や紗、上布に夏帯。厳寒の中で酷暑の衣を選ぶおかしさよ。
一昨年は猛暑、昨年は震災で全国的にふるわなかった夏物市場だが、問屋は思いのほか頑張って商品を作っている。それに応えねば、とまたまた分不相応の審査員気取りで次々合格(約定)を出して行く。明らかに販売力の五割増しの仕入れ方であり、売っても売っても金が残らぬ筈である。

二日夕方には大阪へ飛んで染五郎さん出演の松竹座観劇。気づいた点をいくつか述べると、いつも通り真摯に聞き入れてくれる。野田版で中村屋が評判を取った作品をあえてオリジナル版で上演した「研辰の討たれ」は、染五郎にとって新境地と言っていいだろう。もう少し脚本に手を入れ、各場を整理すれば必ず財産演目になる。
兎も角、妙にチャーミングな所が他の優に無い持ち味である。

明くる日は昼の部を観て京都へ取って返し、「おばけ」に参入。さて「おばけ」とは?次回詳しくレポートする。
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