MIMA MIWA

野田秀樹の最新作「MIWA」を観た。

いただけない。

これまでで一番いただけなかった、と言ってもいい。

大した事は出来ないだろう、との予測は当然あった。

しかし、観ない事には始まらないので、苦労してチケットを手に入れ、観るには観た。
が、その結果は「野田秀樹の劣化」の一語に尽きる。

美輪明宏ほどの題材を得て、この突っ込みの弱さ、掘り下げの浅さ。

これでは世間の「美輪観」に追従しているだけで、何の新発見、新解釈もない。

肯定するにしろ、批判するにしろ、世間をあっと言わせる切り口が無ければ「期待される偶像」をウケ狙いで提供する女性週刊誌と同レベルである。

女郎屋、原爆、差別、その後にあるものこそ重要であり、いま現在の「功なり名遂げた」美輪の存在的悲劇を描かねば、現代演劇としては何の意味も無いのである。

昨日までのマイノリティーが、突如としてマジョリティーになるこの世の不可思議。

こういう事をチェーホフは、おそらく嗤ったのであろう。

天下の名女優、宮沢りえの好演も虚しく、これは駄作であり、それが世間的に認められているという事が、いみじくも美輪に苦難を与えてきた「狂った」時代の再来と言う他は無い。

衆寡は敵せず、とはこう言う事を言う。
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