一泊三日東京の旅
昨朝6:51発の一番列車に乗って上京。
東京美術倶楽部で三年に一回開かれる「東美特別展」へ。まずは一階から四階、そして四階から一階へと六十余店の古美術商のブースを覗くのは、実に愉しく刺激的である。
たった千円で総額数十億か何百憶かの品を、美術館のガラス越しに見るのとは違い、直に手に取って味わう事の出来るこの会は、まさに垂涎の御馳走展である。今回は前回初めて間近で見て震えが来るほど魅了された埴輪が展示されていないのが残念だったのと、最終日とあって大分見劣りする感じがしたが、それでもなかなか普段はお目にかかれない超一級品がまだまだある。
中でも目を見張ったのは三碩の三幅対。陳列してあったのは佐理のみであったが、表具といい何といい、別格のオーラを放っていた。こんな国宝級の物が、簡単に触れる距離で見られる機会はそうそうない。こっそり値段を見たら4500万!これ見たら二三百万の物にはびっくりしなくなるから凄い。
次に目を留めたのは夕顔の花入れであった。「えがお」という銘といい、そのなりかたち、色合い肌合い、まことに愛しい物であったが、今の私には扱いきれぬ物と諦める。
他に鈍翁の豆腐の軸、鈍翁極めの織部の火箸、一入の茶碗(これなど最終日まで残っているのが不思議と思ったが、玄人眼には違うのか?)などが眼に残ったが、今回私が一番心を囚われたのは鎌倉時代の仏手である。卅三間堂の観音像の残欠とのことだが、その類い稀なる曲線美は今まで見た事の無い物であった。まるで天上の池に浮かぶ蓮弁のような、ふうわりとした、軽ろき、命の塊であった。
しばしその場を動けず、我が物にせずば立ち退き難い衝動に駆られ、思い切って値段を聞く。と無理すれば買えない額ではなかったものの、すでに売約済。
だったらシール貼っとけよ!
縁無きものと諦めつ、他の物はどうやら中途半端、さりとて三年楽しみに待って手ぶらで帰るもあじなき事と、初めに一階で眼を付けていた古曽部の茶碗が残っていたら、それを今日の収穫にせんと降りれば果たして有った。
手に取って見ればしっくりと来、素朴な立ち鶴の絵付けがまことに好もしく、今の私には分に合った買い物と納得し、気分良く会場を後にする。
三年後も楽しみな会である。
夜はセルリアンタワー能楽堂へ逸青会公演を観に行く。日頃から親交のある日本舞踊家、尾上青楓さんが若手人気狂言師、茂山逸平さんとコンビを組む会で、日舞と狂言を一番づつ見せた後、日舞と狂言のコラボで締めくくる。
二人の清新な芸風そのままに、まことに気持ちの良い、そよ風のような後味であった。
来年このコンビを高知へ招いて第三回ごふく美馬伝統芸能の夕べを開催する予定である。
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