休み
今日は久しぶりに、本当の休みらしい一日であった。昨日の東京と明日の京都の狭間で今日は何にも予定がなく、風の吹くまま気の向くままに過ごす。
まずはホテルから歩いて日本橋三越に行き、美術画廊や日本の技展という催事を覗く。呉服のコーナーを見ると悪趣味な染め物がずらっと並んでおり、休みの日にこんな物見たくないと、そそくさと立ち去る。中でも安物のスクリーンの江戸小紋が並んでいたのには、「これが日本の技?」と呆れる。気分を変えて久々の室町砂場へ行き、この季節お決まりの冬瓜の煮浸しと生ビールで口開け。続けて胡麻豆腐、焼鳥といく。
ここのうちの胡麻豆腐はちと大き過ぎるのが難である。もうちょっと濃厚な味にして大きさは半分でよい。ここの酒肴の白眉であった鳥わさが献立から姿を消して久しい。聞けば中央区の保健所がやかましいとかで、全く迷惑な話である。鳥はおろか牡蠣でさえ生で供する事をとやかく言うらしいが、他所の店では出してるとこはいくらもあり、砂場が頑なに守っているのは組合の役員でもやっているせいかと勘ぐらざるをえない。
まことにここのうちの鳥わさというやつは、鳥の湯通し加減から山葵の具合、もみ海苔と三つ葉の香りが渾然一体となって絶妙であった。一日も早い復活の英断を主人に求む。焼鳥を待つ間、以前から気になっていたすぐ近所の「亀とみ」という鰻屋を携帯で検索しているうち、俄然鰻が食べたくなり、そうこうするうち焼鳥が焼けて来たので、同じような甘辛醤油味を二つ続けるのもと思い、口直しにもり一枚だけ食べて亀とみへ。
意外に大衆的な雰囲気だがメニューを見ると何と鳥わさがある。嬉しくなって早速注文、これがなかなかいける。砂場と違って海苔がきざみなのは残念だが味は上々である。鰻ときも吸いで締めてぶらぶら歩く。何だか足が重いのでマッサージを探し、海老屋という骨董屋の上に見つけ、やってもらったらなかなか手が合い、延長延長で百分コースになる。揉み終わって何やら口が物足らず、また砂場へ戻ってざると氷うどんを平らげ流石に満腹。東京駅へ向かう。
いつも時間に追われているので、行き先に何時に着いても良い旅は本当に贅沢である。七時半に京都へ着き定宿にチェックインして近所の銭湯へ。スーパー銭湯ではない、ほんまもんの銭湯である。何とも言えぬ気持ちよさ。昭和の日本人であることを実感。
ホテルで休んでいる所へ取引先の問屋から電話があり先斗町のお茶屋さんへ連れて行かれ、京都でもトップクラスに属するであろう別嬪のお姐さんに紹介され話すうち、しあさってからの展示会に来てくれるという。ちょっとした事で縁がつながるのは人生の醍醐味である。その後竜馬の墓参りの為京都入りした染五郎さんから連絡あり木屋町で合流。
本当は松竹座上演の「竜馬がゆく」の土佐弁チェックの予定だったが、何となくノリで食べて飲んで語り、今日はこれでいいや、って感じで終わる。一年中、あれせないかん、これせないかんとノルマに終われ続けている身に取り、何ともユルい、いい感じの一日であった。大袈裟だが竜馬風に、命の洗濯いたして候。